大地の咆哮

杉本 信行(元上海総領事) PHP研究所 1700円+

 元上海総領事を務め、評者の北京大使館勤務時代の同僚でもある杉本氏が、癌を告知され病と戦いながら、力を振り絞って書いた力作である。「中国の現状をたとえていえば、共産党一党独制度の旗の下、封建主義の原野に敷かれた特殊な中国的社会主義のレールの上を、弱肉強食という原始資本主義という列車が、石炭を猛烈に浪費しながら、モクモクと煤煙を撒き散らし、ゼイゼイいいながら走っているようなものだ。」という指摘は、現在の中国の状況を鋭く指摘している。全般に、中国について辛口な部分も多いが、外務省チャイナスクールとして、長年、中国と付き合ってきた経験を駆使して、中国に対する愛情もこめながら書いているだけに、説得力に富む。岡本行夫氏をして、「現代中国の新の姿をこれほど分からせてくれる本に出会ったことがない。」と言わしめるに十分な著作である。